久遠の絆 再臨詔 二章現代~元禄「夕姫楼の少女」

久遠の絆 再臨詔 二章現代~元禄「夕姫楼の少女」


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久遠の絆 再臨詔

あの事件から三ヶ月が経過した。絵理はオカ研を辞めた後、ディーバという自己啓発サークルを作って一大勢力を築きつつあり、仲の良かった栞とも全くしゃべらくなっていた。一方で、俺の方も、万葉を意識的に避けるようになっていた。あれ以来、彼女は俺につきまとい、前世のことについてあれこれ聞いてくるようになり、過去のことを思い出させようと、いろいろ画策してくるようになっていた。それが嫌だったのだ。今ある現実や自分というものが全否定されそうで怖かった。放課後の教室に入ると沙夜先生が俺の席に座って頬杖を付いていた。途中まで一緒に帰ったが、今日の先生はやけにはしゃいでいる。俺と一緒だからだとからかわれてドキドキ。

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明日の期末テストに向けて、深夜勉強しているところに魍魎が現れた。
「若君にはご無礼を、お母上がお呼びです。お迎えに参りました」
誘われるままに付いていくと、そこにはいつか夢で見た祭壇があった。そこに女性が現れた。
「鷹久……よく来ましたね。あなたとこうして話をするのは何年ぶりかしら」
鷹久の母でした。そして、母上は俺に一族への帰順を願い出てきた。天の巫の末裔が、負の想念を浄化する力を失って千数百年。この国はもはや限界にきているというのだ。今や負の想念を浄化できるのは土蜘蛛の一族しかいないという。
「誰だッ、そこにいるのは?!」
やにわに誰何する声が上がり、背後から人の気配がした。そして、いきなり母上の顔が醜悪なものに変貌。そして、妻を娶り、世界を我が物にしろと言ってきたのでした。

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そんなこともあって期末試験は散々な結果に。昼休みに食堂に寄った後、校舎裏を通って教室に戻ろうとしたら、栞がいた。昨日ラブレターをもらったと言っていたが、その返事をしているらしかった。相手の男の顔は見えなかったが、俺の事を持ちだして、何人もの女を不幸にしていながら、それを恥とも思わない卑劣な男だと言っている。
「忘れているなら、オレが思い出させてやるッ!」
そういって男が栞を物陰に引きずり込んだ。慌てて助けに行くと、相手の男は杵築であった。俺は泣きじゃくっている栞の頭を撫でる。杵築がナイフを取り出した。マジで俺を殺そうとしているらしい。馬乗りになった杵築が、俺の頭目掛けてナイフを振り下ろそうとした時
「そこまでよ」
と誰かが止めに入った。絵理でした。あの杵築を片手だけでいなしてます。杵築は捨て台詞を吐いて去って行った。

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放課後、言われた通り教室に残っていると絵理がやって来た。そして、いきなり俺の胸に飛び込んできました。そして、俺にこの世界を救って欲しいと懇願した。どうやら、絵理は俺の正体を知っているようだ。そして、昨夜の母上との会話の最後に出てきたあれが、絵理の言っている守護天使という奴らしい。とても天使とは思えなかったが。そして、沙夜先生と契って、力の封印を解いてくれと頼まれた。沙夜先生が、俺の后となる運命の姫君だと言うのだ。そこへ汰一が助けに入ってくれたが、その後も絵理の言っていた「運命の女性」という言葉が脳裏から離れることはなかった。

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せっかくの夏休みも鬱々と引き篭りがちに過ごしていたが、栞に夏祭りに付き合って欲しいと言われ、汰一も誘って行ってみることにした。すると、神社の境内で万葉と出くわしてしまった。せっかくなので四人で花火見物をすることになったのだが、時間もあったので屋台を見て回る。

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風鈴を見つけた栞が嬉しそうに風鈴を手にとって鳴らしていたら
「ね、ほら、真之介様。ご覧になって…」
と、一瞬、栞の姿が和服にカンザシ姿の女性に見えた。とりあえず、栞に風鈴を買ってやる。

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続いて汰一と射的をすることに。栞がキャラクター付きのキーホルダーをねだってきた。そして、汰一に何か欲しいものを頼んだら?と振られた万葉は、ハンカチをリクエストしました。汰一は結局全部失敗、俺も残りの弾は1つだけになってしまった。そして、最後に撃った弾があらぬ方向へと飛んでしまい、偶然にもハンカチをゲットしてしまいました。
「なんでッ!どうして高原さんの景品の方を取るのよぉッ!たけちゃんの馬鹿!」
そう叫びながら栞は雑踏の中へと消えていきました。追いかけようとした俺を汰一が制し、俺に任せろと言って栞を追いかけていった。花火が始まったので、俺は万葉を連れて、汰一と落ち合う予定の山へと向かった。

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「私…花火は嫌いです……だって、すぐに消えて、逝ってしまうから……」
花火を見上げる万葉の横顔を見ていたら、万葉の顔が江戸時代の女性のような風貌となり、そんなことを言い出した。
「綾……」
思わず俺は、見知らぬ女性の名前を口にしていた。
「なぁに?」
万葉も、それがさも当たり前かのように微笑みながら返事をする。

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汰一達が中々来ないので、俺達は山を降りることにした。すると、暗がりから高校生の集団が不気味に近づいてきた。何者かに土蜘蛛の力で操られているようだ。俺は鷹久の記憶を頼りに印を組んでみた。あの時と同じように力を使うことができた。それどころか、あの頃よりも印の力が強くなっている気さえする。しかし、多勢に無勢。俺達は、命からがら小さなお堂へと逃げ込んだ。そして俺は、自分の運命から逃げずに立ち向かうことを万葉に約束するのでした。

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彼らを操っていた親玉は吉川絵理でした。汰一と栞も捕まっている。どうやら、俺と沙夜先生の代わりに、あの二人を契らせるつもりらしい。俺は外に出ようとしたが、扉はいくら押してもびくともしない。結界が張られているようだ。そして、吉川はお堂に火を放った。俺は結界が破れるまで体当たりをする。しかし、印を使ってもダメだった。代わって万葉が結界を斬りつけたが、やはりダメ。
「愚かなり、女。神剣を持たぬお前ごときの力で、妾の作った結界が破れるものか……」
女性の声が聞こえてきた。それは夢幻の世界で出会った母上の声でした。しかし、万葉の話では、かつて道綱が呼び出した「太祖」というやつが母上の躰を使ってしゃべっているらしい。そして、まだ手はあると言う万葉。
「思い出してッ、武!」

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私の名前は池田真之介。「華侍」という雅号を持つ画家志望の浪人。今、私は、錦絵を扱う豪商喜兵衛さんの店に足取り軽く向かっていた。初めて私の描いた絵が売れたのだ。その途中、私が通う道場のお嬢さんにして、私の幼馴染である秋葉菊乃どのとバッタリ会った。こんな時間に何をしているのかと問われたが、私が絵を描いていることは、私の剣の師匠であり、菊乃どのの父親である石洲斎先生は快く思っていなかったので、ここは、隠しておいたほうが無難かなと、黙っておこうと思ったが、菊乃どのが悲しそうな顔をするので、絵が売れたことを話してあげた。私の絵の数少ない理解者である彼女は、我が事のように喜んでくれました。この後、同じ道場に通う浪人仲間の藤井劉也と鉢合わせ。急いではいたが、劉也に付き合って、ほんの少し話し込むことにした。劉也にも絵が売れたことを話しておいた。

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今日呼ばれたのは他でもない、喜兵衛さんが絵が売れたお祝いをしてくれるということでした。夕姫楼という吉原の遊郭へ行くと言われ、戸惑いつつも吉原の大門をくぐる。喜兵衛さんに言わせると、私の絵には艶がないとのこと。それで私を吉原に連れてきたというわけだ。
そうですか?申し訳ありませんがご厚意に甘えさせて頂きます。」
後援者の厚意を無碍にはできまい。それにしてもここは華やかである。私は思わずその景色に見惚れてしまった。と、通りの向こうで一騒動が起きていた。劉也が忘八の衆と乱闘をしていたのである。私は、劉也を助けに、乱闘の中へ飛び込んだ。しかし、倒しても倒しても、相手が次から次へと加勢してきてキリがない。そこに喜兵衛さんの声が上がり、この場を収めてくれました。

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劉也と別れて遊郭へ入る。そこで待っていたのは、先ほどの乱闘を見学していた印象的な瞳の少女でした。彼女は、私の顔の汚れを拭いた後
「私……昔から主様の事を存じております……鷹久様……そうおっしゃるんでしょう?」
と言い出した。そんな事をいきなり言われて戸惑う私に、彼女はお守りだといって赤い勾玉を手渡しました。彼女の名前は綾。年の頃は十二、三。彼女を前にして、私の胸の高鳴りは止まらなかった。私には、彼女の目の前で女を買うなどという汚らわしい行為はできなかった。そして、用事を思い出したと言って店を飛び出したのでした。

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その帰り道、浄閑寺の近くを通りかかった時に、巨大な白い獣に襲われてしまう。最近噂の少女ばかりを狙うという人食い虎であろうか。しかし、この獣がまとう殺気からは、人間の持つ憎しみの気配を感じる。
「誰か、誰かそこにいるのかっ!」
獣が言葉をしゃべった。俺は咄嗟に剣を抜いて身構える。だが、この獣に剣は全く通じなかった。獣に組み伏せられ、死を覚悟したその時、綾からもらった勾玉が光り輝いた。俺は獣から逃れると、その勾玉を天にかざした。
「ヤメロォーッ!」
獣がもがき苦しみだす。そして、その獣が一人の男へと姿を変えた。そして、捨て台詞を吐いて、その場から立ち去って行きました。

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翌日道場の前で劉也が待っていた。俺は、劉也に昨日見た妖虎の事を話すことにしたが、全く相手にしてもらえなかった。二人で吉原の話をしているところに、菊乃どのが現れた。どうやら話を聞かれてしまったらしい。
私は、付き合いで……。」
と誤魔化しておいた。

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道場での稽古中、石洲斎先生が前日の虎騒動のことを語り始めた。あのような物を放置しておくのは部門の名折れだとして、道場をあげて虎退治に乗り出すつもりのようだ。実物を見ている俺は気が進まなかったが、他の道場生達はみんな乗り気でした。俺は劉也と組んで見回りに出ることになった。

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庭に出て休んでいると、菊乃どのがやって来た。菊乃どのには黙っておこう、余計な心配をかけたくないしな……。そこで、懐に入っている、柔らかい手拭いに、気がついた。昨日、綾が顔を拭いてくれた時の手拭いだった。これを返しに行かなければならない。だが、菊乃どのに誘われてしまっては断ることもできず、彼女に付き合って狛山神社へ行くことになりました。

つづく
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