久遠の絆 再臨詔 一章平安「悠久の出会い」

久遠の絆 再臨詔 一章平安「悠久の出会い」


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久遠の絆 再臨詔

鹿を追って入った森の奥に、碧い泉が広がっていた。そこで一糸まとわぬ姿で水浴びをしている美しい女性。小枝を踏み鳴らす音で、女性は私に気が付いた。鹿を追って迷いこんでしまったのだと言い訳すると、そこに標的にしていた鹿が彼女の側に現れた。その鹿は彼女の友達らしく、俺に向かって敵意をむき出しにしていました。
たかが鹿だろう?
と反論するが、あろうことか朝廷の批判までする始末。
「とにかくもうここには来ないで」
そう言って彼女は去って行った。俺はあやかしに誑かされたような気分だった。

久遠の絆 再臨詔

俺は陰陽道の宗家である賀茂家の屋敷へと戻った。俺の名は安倍鷹久。この家に引き取られて十年。俺は自分に陰陽師としての才能がないことを自覚していた。だから、稽古をさぼって山で剣の修業をしていたのだ。罰として習坊の掃除を命じられた俺のところに、宗主である加茂保憲様のご息女の桐子が差し入れを持ってきてくれた。彼女とは兄妹同然に育てられてきた。作ったのは泰子様だと謙遜する桐子に
でも持ってきてくれたのは桐子だもんな
とお礼を言った。この家を出ていくことを桐子に伝えると、桐子は私が本気を出していないと指摘した。子供の頃は、式神を呼び出してはよく桐子と遊んでいた。桐子には俺に才能がないのが信じられなかった。単に逃げ出すための口実じゃないかと。
「逃げ出すことしか考えてない鷹久にいさまなんて、桐子は……、桐子は嫌いですッ!」
と、そこに兄上が現れた。安倍晴明、不世出の天才陰陽師である。そして、剣の稽古をやめるようにと忠告されたが、俺の気持ちは変わらなかった。

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それには理由があった。かつて俺の母は、俺達兄弟の目の前でさらわれた。一族を裏切った罰として、この国の全て怨霊が集まる霊山に閉じ込められたのである。太祖の霊を蘇らせるための礎として。
「くふふふ…、母が恋しいか?ならばここまで来いッ。母の力はお前達のどちらかに移されておる。母を奪った我を憎み、尽きぬ恨みと執念の果てに我を追ってこい。さすれば、その時こそ再び母子対面させようぞ。」
男はそう語って消えた。兄上は泣きながら俺を責めていました。

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翌日、俺は懲りもせずに習坊を抜けだして森に来ていた。そこで剣の稽古をしていたら、昨日の女性が声をかけてきた。しかし、今日の彼女はやけに人懐っこく、誘われるままに森の泉で語り合った。俺が今抱えている悩みを見抜いた彼女は、俺の母のことまで何故か知っていた。俺の父に聞いたのだと言う。そして、父は今も俺の側にいて、俺のことをいたく心配しているのだと。

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突然耳鳴りがした。太陽が色を失い、風が荒れ狂っている。誰かが式神を飛ばしてこちらにやって来ているのだ。式とは、陰陽師が相手を呪い殺す時に使う魔のことである。俺は手持ちの護符で結界を張った。逃げ遅れた鹿を見て飛び出そうとする彼女を制止する。どうにかならないのかと問われたが
……すまん
としか言えなかった。
「自分さえ無事ならーーを見捨てていいのッ!?」
と彼女が叫ぶ。かつて目の前で母を連れ去られたかつての自分が、今の彼女の姿に重なって見えた。しかし、「しかたがないんだ」と言う以外に出来ることはなかった。鹿目がけて式が襲いかかる。「ーーを見捨てていいのッ!?」という彼女の叫びが耳に残っていた。俺は結界から飛び出し、間一髪、護符を巻いた太刀で式の攻撃を防いだ。俺は、かつて兄上に教わった護符の呪言を思い出しながら印を斬っていた。一発目は外してしまい大きなダメージを受けてしまう。それでも再び印を斬る。最後の力を振り絞って右に打つ。手応えは感じたが、俺の意識は急速に遠のいていった。

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気が付くと見知らぬ屋敷で寝ていた。体中に激痛が走る。
「お目覚めになりまして?」
身なりのよい見知らぬ女性が部屋に入ってきた。あまりの美しさに思わず見とれてしまった。彼女の名前は蛍。しかも、彼女が先ほどまで一緒にいたあの村娘だというのだ。彼女の父が造麻呂(みやつこまろ)だと聞かされて思い出した。最近世間で評判になっている姫君というのが彼女だったのである。面白おかしく風潮して楽しんでいるだけだと言う彼女。
確かに遊びかもしれないな
と同意する。貴族の恋愛など、ただの遊びだと言われても仕方がないかもしれない。しばし語らった後、俺は賀茂家の屋敷に帰ることにした。せめて明け方まではと蛍に引き止められたが、坊を勝手に抜けだした上に朝帰りというわけにもいかないし、妙な噂が立てば蛍にも迷惑がかかる。

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屋敷に帰り、泰子様の部屋の前を通りかかると、中から咳き込む声が聞こえてきた。持病を抱えている泰子様を心配して中へ入る。泰子様はただの風邪だと言ってはいるが。しばし話し込んでいたが、泰子様が俺のボロボロの服と血痕に気付く。仕方なく事の次第を話すことにした。泰子様には事情を分かってもらい、内密にしていただくことにした。

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俺は、蛍のために護符をしたためていた。何でもお見通しの兄上は、桐子に護符作りに役立つ巻物を持ってよこした。手作りの護符を持って蛍の屋敷に向かうが、屋敷の前には貴族の牛車が行列を作っており、とても入れそうにない。俺は彼女と出逢った森の泉に行ってみた。そこに彼女はいた。しばし話をしていたが、徹夜だったので眠くなってきた。それを察した彼女は、俺に膝枕を差し出すのであった。どうして貴族からのお誘いを全て断るのかと聞いてみると、運命の男性(ひと)がいるからだと言う。数千年前から運命づけられ、自分はその男性のために生まれてきたのだと。しかし、それが誰なのかは教えてくれない。
「俺の知ってるヤツ?」
「んふふふ……どうかしら?」
「こいつッ!」
「きゃあッ、あん」
俺は彼女の天邪鬼な唇を塞いでしまった。

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「すき……好きよ。鷹久。本当は、…ずっと、ずっと前から。あなたが覚えていない、ずっと昔から…私は、あなたが…すき………あなたは?」
「蛍、ほたる…、俺達は、きっとこうなる運命だったんだ。」
俺達は生まれたままの姿で愛し合った。
「私…赤ちゃん、ほしいな」
俺に腕枕されながら、蛍がそう言い出した。

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彼女に護符を渡し、屋敷に帰ろうとすると、森の奥に何か気配を感じた。無事に蛍を屋敷まで送り届けて家路につくと、三人組の賊が襲ってきた。どうやら狙われていたのは俺だったようだ。真ん中のヤツだッ!と最初の攻撃を見切った俺は、剣を弾いて印で攻撃。右のヤツだッ!と、次に攻撃も交わし斬って捨てた。と、そこで奴らは退散した。どうも腑に落ちなかった。奴らの狙いは蛍だ。こいつらはただの足止めに違いない。

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急いで蛍の屋敷へ引き返すと、屋根の上に、蛍を背中に抱えた白い魔獣の姿があった。俺は護符と一緒に掴んだ太刀で魔獣に仕掛けた。攻撃は弾かれたが、魔獣もうろたえて蛍を地面に取り落とした。こいつは「鵺」という名の狂悪な魔獣であった。ここは剣で攻撃だ。そして、鵺の動きに合わせ、右に飛びすさって、攻撃だ。しかし、ヤツに剣は通じなかった。顔面を攻撃だと、鵺の顔に刃を叩き込むが、やはり通じない。絶体絶命だった。鵺は最後の一撃を加えようと機を伺っている。俺は太刀と護符とを両手に構え、左手で大きく印を斬った。そして、水平に構えた太刀で五方星の中心を貫いた。確かな手応えを感じたものの、鵺の強烈な体当たりを食らってしまい、俺は意識を失ってしまった……

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あの後、鵺は逃走し、俺と蛍も無事だった。俺は兄上に事情を話し、助力を願い出た。なりふり構ってなどいられなかった。後日、兄上と蛍の屋敷を訪ねたが、蛍を一目見て、あの冷静沈着な兄上が動揺していた。骨肉の争いな予感。帰宅して、泰子様にも報告する。しかし、蛍の素性を知った泰子様に、この件が済んだらもう会うなと忠告されてしまう。俺の気持ちが変わりそうもないと悟った泰子様は、何かを思い立って出て行きました。

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そんな折、主上が鵺の出没した上高野に行幸するので、全員で主上を警護するよう命が下った。気になるのは、なぜ突然、主上が上高野など行幸する気になったのか?と言う事。そして、そんな不安は現実のものとなる。主上が美しい姫と運命的な出逢いをし、更衣として入内させるという話が持ち上がった。その美しい姫とは蛍のことであった。心傷ついた俺は、あの泉へと足を運ぶ。そこに、式から助けたあの鹿がやって来た。小鹿も一緒だった。
「わぁッ!かわいいッ!」
蛍が子鹿を抱いていた。屋敷を抜けだしてきたようだ。

久遠の絆 再臨詔

俺は蛍に入内するかどうかの意思確認をする。
「…………お受けするわ」
蛍は、そうポツリと呟いた。
「俺よりも主上が好きになった、そう言うことだろ?」
俺は逆上して蛍を責めた。そして、蛍の言っていた「運命の男性」が俺ではなかったことを悟る。彼女は、この国を覆う、澱んで濁った暗い想念を浄化して、「まつろわぬ神々」を完全に封じるため、地上の神たる者に神剣を渡す天命を受けて、この世に転生してきたのだと語った。そして、俺の事を本当に愛してはいるが、俺を選ぶことはできないのだと。それはこの国を滅ぼすことを意味するからだと。

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そこに光栄が現れ、更には道綱と名乗る陰陽師もやって来た。賀茂家とは同じ土蜘蛛の末裔だと言っている。そして、土蜘蛛の世界をつくるのに邪魔だからと、蛍を狙っていたのでした。光栄は、道綱に呼ばれて出てきた道満という名の大男にやられてしまった。俺も、道綱があの親鹿を生贄にして呼び出した犬神と呼ばれる式神に苦戦を強いられる。そして、かつて母を俺達から奪ったあの男が道綱であったことを知らされた。頭に血がのぼって太刀を振り回す俺の目の前に、今度は鵺が姿を現す。剣で斬りつけるも全く歯が立たない。逆に体当りされて痛手を受けてしまった。最後の手段にと、太刀で印を描く。しかし、それを犬神に邪魔されてしまい、そこを鵺に襲われた。肩から吹き上がる血しぶき。蛍の悲鳴が聞こえる。そしてトドメの一撃。

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血でふさがっていた目にうっすらと視界が戻った。神剣を奪おうと、道綱が蛍の前に立ち塞がっている。どうにか立ち上がって止めようとしたが、犬の首の姿をした四つの式神に手足を縛られてしまった。そして、俺の命と引き換えに、蛍に神剣の譲渡を迫る。蛍は着物を脱ぎ捨てると、俺から太刀を拝借した。
「ごめんなさい…………わたし、『御剣の使者』失格です…………これ以上、自分を騙すことが出来ません。私、世界が滅んでも貴方といたい。貴方に生きていてほしい。私は…世界より貴方がほしい……」
そう言って、蛍は太刀を胸に突き刺した。そして、切り裂いた体の中から一振りの神刀「天叢雲剣(あまのむらくものつるぎ)」を取り出したのだ。

久遠の絆 再臨詔

「ぐふふふ、しかし綺麗な躰しているじゃねぇか。なあ兄者、ついでにこの女もらっちまっていいか?」
そう言って、道満が蛍に近づいた。
「ちくしょおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉx!」
俺は取り付いていた式神を無理やり引き剥がし、飛燕の速さで蛍の持っていた神剣を掴むと、道満を一閃した。道綱は、もんどり打って転げまわる道満を連れて引き上げた。

久遠の絆 再臨詔

どうにか蛍を助けることができた。何度も何度も繰り返し謝る蛍の唇を、俺は自分の唇で塞いだ。昔の記憶が蘇る。俺は、子供の頃に蛍と出逢い、そこで恋人の契りを結んでいたのだ。

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俺と蛍は屋敷に戻った後、保憲様と兄上に全てを打ち明けた。蛍の犯した禁忌は許されるものではなく、罪を償うために、次の満月までしかこの世に留まることはできないのだと言う。あれから十日、俺はずっと寝たきりでいたが、ようやく動けるようになったので、蛍に会いに行こうとした。もう時間はないのだ。桐子が引き止めるのを振り切って外へ出た。そして屋敷に忍び込もうとした時、奥から蛍の悲鳴が聞こえた。悲鳴のした方へ急行すると、そこには巨大な化け蜘蛛がいて、蛍は蜘蛛の巣に貼りつけられていた。俺は、その場に居合わせた保憲様と兄上と連携して蛍を救い出し、神刀で大蜘蛛を撃退した。兄上が蛍のことをどう思っているのか気になったが、俺はその場を二人にまかせ帰宅し、今日は遅いので寝る

久遠の絆 再臨詔

翌朝、保憲様が全員を集めた。強大な敵との戦いを前に、万が一を考えて後継者を決めておくためだった。後継者に選ばれたのは、光栄と兄上だった。それは加茂家を暦道と天文道に分家させるという意味である。面白くないのは光栄であった。その後、保憲様に呼ばれた俺は、保憲様から両親のことについて謝罪され、そして、桐子との結婚を勧められたのでした。部屋から出ると、光栄がいた。立ち聞きしていたようだ。
「鷹久……、お前を殺してやるッ!」
そう言って光栄は立ち去っていった。

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刻限の日がやってきた。出掛けに桐子がやって来て、俺を引き止めようとする。
だってお前は、誰よりも大事な可愛い妹だから
と説得したが
「私、あの方が憎いですわ……にいさまのお心を独り占めにして放さない、あの女性が憎いッ…………」
と桐子らしからぬ黒い台詞を吐いていた。そして、お清めと温顔成就の祈願のためだと桐子が持ってきてくれた御神酒を飲んだら、体の力が抜けてしまった。そこへ光栄が現れた。そして、俺に刀を突き刺した。

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気が付くと泰子様の側で寝ていた。泰子様の話では、光栄は土蜘蛛と手を結び、駆けつけた保憲様を殺し、桐子を連れてどこかへ去ってしまったらしい。やたら敵のことについて詳しく知っている泰子様に疑念を持った俺だったが、どうやら泰子様は彼らの仲間だったようです。そして、泰子様の姉である俺の母も、保憲様の側室となり、土蜘蛛を祖に持つ賀茂家の血を自身の血に加え、完全なる古の土蜘蛛の血を持つ子供を生むために賀茂家に入ったのだったが、母は一族を裏切って、俺達兄弟を産んでしまったのだと。泰子様は、俺と兄上のどちらに闇の皇子としての資質があるのかを見極めるため、その後も賀茂家に残っていたという。俺に対する愛を口にして引き止める泰子様の後ろには大蜘蛛の影が見えていたが、俺は保憲様が自分の身を犠牲にして取り戻してくれた神刀を持って、光栄が桐子と剣の交換場所として指定してきた羅城門へと急いだ。

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羅城門では約束通りに光栄が待っていた。桐子は無事だったが何やら様子がおかしい。
「桐子…ゆけ。行って鷹久にお前の気持ちを伝えてこい……」
そう光栄に促された桐子がユラユラと近づいてきた。
「あはは。鷹久にいさまぁ。にいさまぁ、だぁいすきぃ」
と子供のように笑って、桐子が首にしがみついてきた。そして、俺から神剣を奪い取り、階段を駆け降りていった。どうやら、三巴虫という土蜘蛛族に伝わる毒を飲まされてしまったようだ。桐子を追うが、その前にかつて俺を襲った三人の賊が立ちはだかった。左の敵だッ!と、最初の攻撃を見切って印で攻撃。右のヤツだッ!と次の攻撃も見切り、あっさり撃退した。今度は餓鬼が襲ってきた。俺は篝火を利用して餓鬼を倒すことに成功したが、それによって辺り一面が火の海となってしまった。よろめく俺の前に、光栄が立ちはだかった。以前の光栄からは想像できない強大な力であった。俺は意識を失った。

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気が付くと、目の前には光栄を捕縛している大蜘蛛と泰子様の姿があった。
「早く、高野へ……」
俺は蛍の元へと急いだ。崩れる羅城門を背にして。

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蛍の屋敷も燃えていた。蛍を探し回っていると、そこに神剣を誰にも渡すまいとしっかり両腕で抱きながら、血だまりの中で倒れている桐子を発見した。まだかすかに息はあった。桐子の名を叫びながら抱き起こすと、口から三巴虫が出てきた。三巴虫を飲んだ人間は己の欲望のままに行動するが、欲望に逆らえば死んでしまう。つまり、桐子は俺を独占したいという欲望に逆らったのだ。それは俺が悲しむことだからと。桐子は俺が誰なのかもわからなくなっていた。
「おねがいッ!伝えてッ、兄様に。桐子の大好きな、あの人に伝えてッ。とうこは、桐子は……鷹久にいさまの…笑顔がいちばん、すき…………」
そう言い残して、桐子は息を引き取った。

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炎の奥へと進むと、道綱と鵺に退治している兄上と蛍がいた。鵺が俺に襲いかかってきたが、そのまま動かない。そして、鵺が来るのを待って神剣を突き刺した。すると、鵺は俺の周りをグルグルと周りだした。俺は無用心に背を向けるが、これは策略だった。不用意に襲ってきた鵺の首を掴んで中に吊り上げ、胸を一刺しした。俺は桐子への恨みから、鵺をなぶり殺しにしてやった。俺は恍惚に酔いしれていた。
「鷹久ッいけない!」
と蛍が叫ぶと同時に、電流が走って、俺は剣を落としてしまう。拾おうとしても、剣は強烈な電撃を発して俺の手を拒んだ。俺を説得しようとする蛍だったが、まつろわぬ神々の力に目覚めた俺は聞く耳を持たなかった。俺を止めようと飛び込んでくる蛍に向かって印を撃った。

久遠の絆 再臨詔

崩れ落ちる蛍の体。そこに兄上を抱えて炎の中から道綱が出てきた。そして勝利を宣言する。
「わた…し…を……さがして、たかひさ。なんども…なんども…繰り返し……繰り返し……罪のゆるされるその日まで…………こうして、貴方を愛して死んでいく私に……逢いに…来て…………」
蛍は息絶えた。

久遠の絆 再臨詔

怒りに我を失った俺の中で、闇の皇子が目覚めてしまった。飛びかかってきた鵺を一捻りに殺し、道綱も地獄へ送ってやった。俺は蛍の亡骸を屋敷の中へと運び込んだ。炎が全てを浄化し、天へと運んでいる。俺達が何のために生まれ、巡り会ったのか。舞い上がる蛍のような火の粉を浴びながら、俺は涙が枯れ果てるまで、空を見上げて泣き続けていたのだった。

久遠の絆 再臨詔

夢から醒める。今見たものは俺の前世だと言う天野先輩。そして、これから更なる前世への旅をすることになるだろうと忠告された。天野先輩と別れて校門へ向かうと、妖魔が現れた。俺に助けを求めているようだった。更に校庭の奥では万葉が弓を構え、大猿の化け物と戦っていた。
「武……、思い出したのね?」
しかし、俺には今起こっていることがまだ理解できてはいなかった。しかし、これだけは確信していた。彼女が俺の大切な人の生まれ変わりであることを。

つづく
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