After… ~忘れえぬ絆~ 2月~「After...」

After… ~忘れえぬ絆~ 2月~「After...」


12~1月はこちら

このゲームとは何の関係もありませんが、今日、3DSを購入してきました。新しいハードを買ったのは、実にゲームキューブ以来ということになりますし、携帯ゲーム機に至ってはゲームギア以来です。「ソニックジェネレーションズ」がどうしてもやりたかったのでね。発売は1ヶ月以上も先なんだが、ついつい衝動買い。色はセガ信者なら当然のアクアブルー。全然セガっぽくない青ですが。とりあえず、3DSではまだ欲しいゲームがないので、DSの「ソニックカラーズ」を買って遊んでます。年末は、ソニックとぷよぷよとマリオカートあたりを買ってみっかと思っとります。



2月14日

After… ~忘れえぬ絆~

朝起きると枕元に何か置いてあった。渚がバレンタインのチョコレートをくれたようだ。この一大イベントの日に、よりによって俺の高校は創立記念日で休みなのである。渚は買い物に出かけてしまったし、暇なのでバイト先にでも行ってみる事にした。遅刻している奴がいて人手が足りないということで、顔を出すだけのつもりが、急遽バイトする羽目になってしまった。そこへ香奈美がやってくる。丁度遅刻している奴がもうすぐ来るということでバイトを切り上げ、香奈美と一緒に帰る。道すがら、香奈美から手作りだというバレンタインのチョコを渡されました。そこで俺は、バレンタインデーが香奈美の誕生日である事を思い出した。咄嗟にカバンの中にあったキーホルダーを香奈美にプレゼントする。これは、一年前の研修旅行で京都に行った時、香奈美が欲しそうに見ていた物で、俺はそれを買ったはいいが渡しそびれていたという逸品だった。意外にも香奈美は喜んでくれた。そして
「これ、お礼」
と言って、香奈美は背伸びをしながら祐一の首に手を回し、今度は唇にキスをしてくれた。頬を赤らめながら去って行く香奈美を、再び俺は呆然と見送ったのでした。

After… ~忘れえぬ絆~

その後、俺は学校へと向かった。誰もいない廊下を歩いていると、ライダースーツに身を包んだ三日市先生に声をかけられ、保健室でコーヒーをごちそうになることになった。コーヒーを自分の前に置いて前屈みになった三日市先生の胸元が気になります。
「何を見てるの?」
とからかわれて慌てる俺。先生は、俺に腹違いのお兄さんがいないかと聞いてきた。どうやら俺が知り合いに似ているらしい。雰囲気とか優柔不断なところとか。香奈美と陽子どっちが好きなのかと聞いても、答えられないでいる俺を見て
「ほんと、似てる・・・あのバカと」
と呟いていた。死んでしまったと思われる先生の元恋人でしょうね。

After… ~忘れえぬ絆~

学校を後にした俺は、次に公園に立ち寄ってみた。公園にはカップルが大勢いたのだが、その中の一組に目が留まる。美雪だった。美雪の目の前にはチャラ男系の男が立っていて、美雪は泣いているようだった。チョコを渡そうとしていた美雪だったが
「・・・うざいんだよ・・・もう俺に構うなよ!」
と言って美雪の手を振り払う。チョコは地面に落ちた。
「・・・口出すなよ・・・俺は・・・登る・・・」
お仲間さんでしたか。冬山は危険だからと止める美雪を振り切って、男は早足で消えてしまった。俺は美雪に気付かれないようにそっと公園を出た。続いて図書館へ。暖房の効いた館内で居眠りしていたら陽子に声をかけられた。借りたい本があるのだが、高くて届かないから取って欲しいと言われたので取ってあげた。そして、バレンタインのチョコを陽子からもゲットした。

After… ~忘れえぬ絆~

家に帰る頃にはすっかり夜が更けていた。何をしていたのか渚に聞かれて口を濁すが
「どうして?もう夜中じゃない・・・・。どうしてあたしが一人で家にいなきゃいけないの?」
渚は目に涙を溜めて非難している。
「あたし・・・待ってたのに・・・・・」
ひょっとして「お兄ちゃん好き好き」なのか?チョコを貰って嬉しかったと言ったら機嫌が直りました。

2月18日

After… ~忘れえぬ絆~

冬山の予行演習間近。今日はそのミーティング。そして、監督者の同伴が必要だということで、三日市先生が付き添いすることになった。

2月21日

After… ~忘れえぬ絆~

いよいよ予行演習の日。近場とはいえ雪山は険しかった。最初はハイキング気分だった女子達も言葉少なになっていく。休み休みでどうにか九合目近くまで上がってきた。香奈美が辛そうだったので、無理しないで休もうと提案したが、このくらいで根を上げていたら穂高には登れないと意地になっているようだった。
「香奈美、無理するな、休むぞ」
と声をかけたが
「ダメ!もうちょっとだけ・・・」
と言って、香奈美が急に後ろを振り向いた。その瞬間足を滑らせてしまった香奈美だったが、斜面がそれほどでもなかった事もあり、後ろにいた俺が受け止めて事なきを得た。とりあえず、ここで休憩を取ることにしたが、香奈美はすっかり落ち込んでいた。

After… ~忘れえぬ絆~

夕方に頂上へと辿り着いた。女子達は、山頂から見える絶景に疲れを忘れて感嘆の声を上げていた。今日は、頂上から少し下った平坦な場所でキャンプを張ることにした。先生はこんな場所で勉強しろと言ってノートを差し出してきた。穂高の事が先生にバレるのもまずいので、ここは黙って従う。

After… ~忘れえぬ絆~

俺は一息入れようとテントの外に出た。香奈美のテントをのぞくと、香奈美が顔を出してきた。そして、街では見れない雄大な星空に気付き、二人で並んで見上げていた。
「人が心配してるのに一人で舞い上がって山に登るんだって・・・。ちょっとは待ってる方の身になれって・・・」
「でも、そうやって待ってるのも悪くないかなって・・・」
そう言って、穂高へ行くことは諦めると宣言した。そして、穂高に持っていって欲しいと、古いお守りを手渡された。これは香奈美の父親が最後の登山に出かけた時に、香奈美が渡しそびれてしまったという曰くつきのお守りでした。

3月以降

After… ~忘れえぬ絆~

卒業式。俺と紘太郎と香奈美はエスカレーターで大学へ、陽子は看護学校、慶生は家を継ぐためにそれ系の全寮制の大学へ行くようです。これからは今までのようにはいかなくなるが、例え逢うことがなくなったとしても10年後にはまた皆で逢おうと約束したのでした。

After… ~忘れえぬ絆~

いよいよ穂高に登る日が来た。順調に進み、まもなく頂上というところで、雲の合間から突き出した白い山々が目の前に現れた。その絶景に息を呑む三人。ここで、紘太郎がリーダーの交代を申し出た。山頂に着く時のリーダーは、穂高に一番こだわっていた俺に任せたいという。慶生も同じ意見だった。ついに山頂へと辿り着いた。眼下に広がる雲海を眺めながら充実感に浸る三人だった。慶生がカメラを取り出そうとしたが、俺はそれを止めた。
「この風景は・・・俺たちの心の中にだけ残しておこう」
紘太郎も頷いた。そして、三人でしばらくその景色を眺めたのであった。

After… ~忘れえぬ絆~

下山を始めた俺達は、夕方には奥穂高に辿り着いた。日が暮れるまでに、その先にある穂高岳山荘に着かなければならなかった。雲が出てきたので先を急ごうとしたが、慶生がお茶を切らしてしまったので一口欲しいと言い出したため、俺は水筒を取り出した。しかし、手元が滑って水筒が落ちてしまった。慌ててそれを受け止めた慶生だったが、その際に、俺は香奈美からもらったお守りも落としてしまったようだ。辺りを探すと、足元からちょっと離れた雪の上に落ちていた。しかし、急に風が吹いてお守りは飛ばされてしまった。暗くなり始め、風も強くなってきたので、俺達は諦めて下山を急ぐ。死亡フラグがビンビンです。

After… ~忘れえぬ絆~

突然の吹雪に見舞われた。何も見えなくなってしまい、今日はここでビパークすることにした。テントの中で、偶然スイッチが入っていた慶生のトランシーバーから声が聞こえてきた。
「ざ・・・・ざ・・・たすけ・・・ざ・・・たすけて・・・だれか・・・落ちる・・・」
すぐ近くで誰かが遭難しているようだった。運が悪かったと他人事のような紘太郎だったが、俺は助けに行こうと提案した。無茶だと言う二人だったが、以前慶生がバイクで事故った時に何もできなかった事を思い出して、あんな情けない気持ちになるのはもう嫌だった。紘太郎も俺の気持ちを汲み取って、120メートルあるザイルを使って行ける所までという条件で協力してくれた。三人は吹雪の中へと飛び出した。

After… ~忘れえぬ絆~

ザイルの残りもあと僅かというところで、俺は遭難者を発見した。俺は遭難者に必死にザイルを結びつけた。そして足を踏み出したが、雪庇を踏んでしまい、落下してしまった。激しい音と衝撃の後、ようやく落下が止まった。全身が冷たかった。それ以外は何も感じられず何も見えない。

ようやく分かった、俺の心の中にいるのが香奈美である事を。

After… ~忘れえぬ絆~

母親に起こされて目覚める香奈美。着替えようとしていたら電話が鳴った。母親が慌てた声で香奈美を呼んでいる。香奈美は、父親の事故の時も同じような感じだった事を思い出した。
「香奈美、ユウちゃんが・・・」

軽いエンディングのようなものが流れたが、本番はこれから。

After… ~忘れえぬ絆~

画面が真っ白に。あの男女がようやく姿を現した。男はサイファー、女はルーと名乗っている。ここでは思っていることがそのまま相手に伝わるので言葉は必要ないらしく、今見えている二人の姿は、俺の記憶の中でビジュアル化されているのだという。ここは魂を解体してリサイクルするための場所。つまり俺は本当に死んでしまったようだ。しかし、俺は本来は死ぬはずではなかったという。
「えっとね、あたしが失敗しちゃったの」
あそこで誰かが死ぬのは決まっていたが、ルーが間違って俺を死なせてしまったらしい。で、生き返らせなければいけないのだが、俺の体はもう使い物にならないので、特徴の似通った人間の体を借りるのだという。その人物は、俺もよく知った人間だという。頭が混乱していたが、時間がないとかでブラックアウト。

After… ~忘れえぬ絆~

「聡さん?わかる?」
目を覚ますと、目の前には美雪がいた。遭難していたのは、やっぱりあのチャラ男だったのか。医者を呼びに美雪が出て行った後、俺は鏡を覗いてみた。そこにはそのチャラ男の顔が映っていた。そこへルーが現れて、この学文路聡という男の体が俺が借りる体であると、驚く俺に告げたのだった。美雪が医者を連れて戻ってきた。処置を受けながら美雪と医者のやり取りを聞いていたら、聡を助けようとした俺が死んだのだと話していた。

After… ~忘れえぬ絆~

病院が寝静まるとルーがまた現れて、今起きていることに実感の沸かない俺を、ある病室に連れてきた。中から女性の泣き声が聞こえてきた。泣いているのは香奈美だった。
「どうしてよ・・・・ねぇ・・・返事してよ・・・・」
思わず声をかけようとしそうになる俺に、今声をかけても混乱させるだけだと静止するルー。それでも声をかけたくて仕方がない俺を、ルーはしばらく眠らせた。再び目が覚めると、病室には香奈美の姿はもうなかった。そして、そこにある遺体の顔が自分の物であることを確認して、ようやく本当に死んだということを実感したのでした。

After… ~忘れえぬ絆~
「すまない・・・」
学文路聡に謝られた。学文路聡も死んではおらず、この体には俺と学文路聡が同居しているらしい。なんか気持ち悪いんですけど。本当に死ぬはずだったのが学文路聡である可能性は高いのだが、確実なことは分からないという事で、緊急措置として、二つの魂で一つの体を使って経過を見る事にしたのだという。ただし、このままの状態ではいられないので、いずれ魂に大きな変化が出るだろうと。学文路聡の魂は、俺を事故に巻き込んで死なせてしまった事をとても後悔しているが、自殺することは俺を殺す事になるのでできない。せめてこの体を俺に自由に使ってもらおうと、今は意識の一番深いところに沈んでいるようです。俺は聡を恨むが、魂の雰囲気が変わってしまうから恨まない方がいいとルーに忠告された。

After… ~忘れえぬ絆~

学文路聡は25歳のフリーターだったが、実はこの男、俺の通っていた学園のオーナーの跡取り息子であった。こういうのも玉の輿というべきか。美雪は聡の婚約者だった。美雪は婚約者に対して妙にビクビクしていた。美雪に紘太郎達の事を聞くと、はっきりとはしゃべらなかったが、どうやら同じ病院に入院しているらしかった。その後、美雪にテレカを要求したが、美雪は首を横に振った
「いいから・・・置いて行けよ」
美雪のオドオドした態度にイラっときて声を荒げる。これでは学文路聡そのものです。美雪が部屋を出て行ってから、俺は紘太郎の部屋を探す事にした。

After… ~忘れえぬ絆~

紘太郎の部屋はあっさり見つかった。中に入ってみたが、紘太郎は俺(聡)を怖い顔で睨んでいた。俺は紘太郎に一方的にまくしたてられるだけだった。紘太郎が怒っているところを初めて見た。結局、何も言えないままに病室を後にした。この顔では何を言ってもしかたがない。俺は顔の見えない電話に活路を見出そうとした。そして香奈美に電話をかけた。しかし、香奈美の不審そうな声を聞いて怖くなり、間違い電話だといって電話を切ってしまった。

After… ~忘れえぬ絆~

あれ以来何日も経ったが、病室に美雪以外の人間が来ない事が不思議だった。聡の両親すら顔を見せない。そして、そのまま誰も見舞いに来ることなく一ヶ月が過ぎ退院となった。病院を出ると、香奈美たちがタクシーに乗ろうとしているのが見えた。一瞬紘太郎と目が合った。俺は皆に近付こうと歩き出した。
「お願い、やめて・・・」
と美雪が制したが、構わず近づいた。紘太郎は冷たい態度でタクシーに乗り込んだ。そして渚が怖い顔で近寄り
「返してよ・・・お兄ちゃん・・・返してよ・・・」
と泣きじゃくっていた。俺はそれを黙って見ているしかなかった。
「ほっとけよ」
そう慶生に言われて心が折れそうになった。香奈美に声をかけるが
「なにか?」
と柔らかい口調ながらも鋭い視線を突き刺されてしまった。皆は行ってしまいました。

After… ~忘れえぬ絆~

しばらく茫然とした後、美雪とタクシーに乗り込んだ。タクシーの中でいろいろ考えていたら、ある事を思い出してタクシーを降りる。美雪の声が聞こえたが、それを無視して歩いた。そして自分の家の前に立っていた。どうすればいいのか思案していたら玄関のドアが開いた。
「なにしに・・・来たのよ!」
今まで見たこともないダーク渚がそこにいた。やはり、俺は何もできなかった。

After… ~忘れえぬ絆~

聡の部屋に帰ってきた。金持ちのボンボンとは思えない普通のマンションだった。コーヒーを入れるという美雪に
「あ、コーヒーメーカーはそこの上にあるから」
俺は自分の口から出た言葉に驚いた。美雪を返してどういう事なのか一人で考えていた。そこへルーが現れた。どうやら、俺と聡の記憶の融合が始まっているという事らしい。翌朝目覚めると美雪が朝食を用意していた。しかし、俺はそれを口にせずに外へと出かけようとした。でも、美雪がかわいそうだったので、ありがとうと言ってあげた。美雪はちょっと驚いていた。ルーがまた出てきた。香奈美に自分が祐一であることを伝えるとルーに告げると、ルーは大変な事になるからと反対した。しかし、前例がないことなのでどう大変なのかはよく分からないようだ。俺はルーを無視して歩き出した。まずは香奈美の家へ向かう。香奈美の家の前で呼び鈴を押そうかどうか迷っていたらルーが現れた。他人に今の状況を知らせたらどうなるのかサイファが調べてるから、今はやめてくれと言われた。ひとまずはそれ従った。

After… ~忘れえぬ絆~

俺は再び自分の家に行く事にした。門が開いていたので中に入って家の様子を伺っていたら、母親が来ていた。渚はどうやら部屋に閉じこもっているようです。母親はこんな状況なのに明後日にはまた帰らないといけないらしい。勝手な親だと思っていたら、母親は俺に謝りながら泣き出した。それを聞いているのが辛くなり、俺はその場から逃げ出した。霞ヶ杜学園は授業中で静かだった。
「学文路・・・くん?」
俺を呼び止めたのは三日市先生だった。どうやら知り合いらしい。というか、先生の元彼が聡だったようだ。先生は、聡が事故の事を悔やんで学校に来たと思い、俺が死んだのは運が悪かったんだと励ましているが、運が悪くて死んだと言われた俺の胸は苦しかった。

After… ~忘れえぬ絆~

部屋に戻ると美雪がカレーを作っておいてくれた。置手紙の美雪もビクビクしている。聡に対する恨みも薄らいでいて、今は聡が美雪をどう思っているのか気になっていた。
「聡、お前、このままでいいのかよ?」
聞こえているかどうかわからないが、聡にそう呟きかけた。返事はなかった。夜になり呼び鈴が鳴った。ドアを開けるとそこにいたのは何と香奈美だった。
「やめてもらえますか?」
冷たい言葉だった。俺が今日香奈美たちの周りをうろついていた事を知っているようだった。どうやら、香奈美たちは一緒にいると俺の事を思い出すからと、みんな会わないでいるらしい。そうやって忘れようと努力しているのに、俺(聡)がそれを邪魔しているのだと非難していた。
「もう・・・これ以上、あたし達に思い出させないで。何も思い出させないで・・・」
「忘れないでくれよ・・・」
思わずそう口走る。勿論、そんなことを聡に言われてもね。二度と自分達の前に姿を見せるなときつく言い放って、香奈美は帰ってしまった。

After… ~忘れえぬ絆~

「すまないと思ってる・・・」
香奈美を黙って見送ると、突然声が聞こえてきた。聡だった。自分がいなくなればいいと言う聡だったが、そこへルーとサイファが現れて、それはできないと告げた。すでに魂の融合が始まっていて、あと一ヶ月で二人の魂は一つになるという。しかし、それによって新しい魂が生まれるのか、どちらかの魂が残るのかは分からないようだ。数日後、公園でたそがれていたら、しばらく顔を見せなかった美雪が現れた。俺は、美雪が何でこんな男にここまで尽くすのか、どうしてここまで卑屈なのか分からなかった。イライラしてきたので、美雪を公園に残して部屋へと帰った。聡が出てきて、なるべく美雪を傷付けないように遠ざけてくれと頼んで消えた。勝手な奴である。

After… ~忘れえぬ絆~

翌日、凝りもせずに俺は香奈美の家に向かった。呼び鈴を押すと香奈美の母親が出た。自分が何者かを伝えられず、いないならいいと言って立ち去ろうとした。しかし、このまま帰っては何にもならないと迷っていたら
「なにしてるんですか?」
いきなり後ろから香奈美に声をかけられた。取り付く島もない様子だったが、必死に話しかける。紘太郎や慶生、渚の事。あまりにも詳しく知っているので
「なんで?どうしてそんなこと・・・知ってるわけ?それとも調べたの?」
と香奈美の導火線に火を付けてしまった。完全に裏目。と、そこへ美雪が登場。最悪のタイミングだった。香奈美は行ってしまった。相変わらずの美雪に俺はイライラしていたが、かつて美雪に誘惑された事を思い出す。あれが、とても同一人物とは思えない。
「それで他の男に手を出すのかよ?」
思わず言ってしまった。香奈美との会話を邪魔された怒りもあって、俺は美雪を追い詰めていった。泣き崩れる美雪を見て後悔し
「・・・悪かった・・・こんなことを言って・・・もう・・・付いてくるな」
そう言って立ち去ろうとすると
「なんだか・・・変わった・・・」
美雪はそう呟いていた。俺は構わずに歩き出した。

After… ~忘れえぬ絆~

しばらくして美雪が部屋を訪ねてきた。何であんな酷いことを言ったのにまた来るのか分からない。
「だって・・・他にいないもの・・・酷いこと言うのも、あたしのことを見てくれるから・・・」
親の決めた許婚ということは美雪も相当なお嬢様みたいだが、聡みたいな男が新鮮だったのでしょうか。穂高での遭難事件以来、聡が少し変わったと言う美雪。美雪に違いが分かるということは、香奈美なら必ず自分が祐一だと分かるはずだと確信した俺は、いてもたってもいられず、美雪を置いて外へ飛び出した。香奈美の家に着き、呼び鈴を押すと香奈美の母親が出た。夜も遅かったが、香奈美は最近この時間はいつも留守なようです。しばらく待っているとバイクがやって来た。そのヘルメットには見覚えがあった。紘太郎だった。何で妹の渚ではなく香奈美にこだわるのかと聞かれ
「俺は・・・香奈美に会わなきゃいけないんだ」
と答える。そして、バイクを貸してくれとお願いする。このバイクを夏祭りや峠で羨ましく見ていた事を話す。混乱する紘太郎に香奈美の居場所を聞き出し、中央公園へと向かった。紘太郎は最後に気付いてくれたようだった。

After… ~忘れえぬ絆~

香奈美がいた。俺は話しかけた。戸惑う香奈美に
「星を見てたのか・・・」
と言って夜空を眺める。香奈美の目は帰れと言っていたが、俺は構わずに香奈美に近付いて隣りに腰をかけた。帰ろうとする香奈美に、子供の頃に香奈美と一緒に星を眺めた時の思い出を語る。驚いて、誰からそんな事を聞いたのかと怒り出す香奈美。
「俺だよ・・・祐一・・・」
しばし黙り込む二人。その後、どうして自分を苦しめるのかとまくし立てる香奈美に、これまでの経緯を話すが、当然そんなことを信じるわけもない。怒って帰ろうとする香奈美だったが、俺は香奈美の腕を取って引き留める。必死に訴えるが、俺もいつの間にか声を荒げてしまっていた。
「言わないで!どうしてあなたが祐一なの?全然違うじゃない!」
このままではまずい。あの事を思い出させれば・・・。香奈美を強引に引き寄せて、バレンタインデーの日のことを語った。香奈美の誕生日だということを忘れてて、慌ててキーホルダーをプレゼントした事を。そして生まれて初めてのキスを香奈美とした事を。そして香奈美を抱き寄せた。
「ユウ・・・?」
ようやく分かってくれた。重なり合う唇。でも実際にキスしているのは、あの憎きチャラ男なんだよな。中々面白いシチュエーションです。新しい形の禁断の愛って感じで。送っていこうとした俺だったが、香奈美は今日は一人で帰ると言い出した。まだ少し混乱しているようです。

After… ~忘れえぬ絆~

部屋に帰ると電話が。相手は聡の父親だった。遭難事故の被害者には手厚い見舞いをしたと言ってた。つまりは金で解決したと。自分の命を金で片付けられたことに腹を立てて、俺は聡の父親を自然と怒鳴りつけていた。聡が親に反発する理由が分かった。また電話が鳴った。今度は紘太郎だった。紘太郎は聡と似たような境遇にあるようだ。そこで、聡の父親が、俺の母親と渚の前で土下座して謝ったことを聞かされた。翌日、美雪が部屋を訪ねてきた。包みを渡されたが、訳が分らずに受け取りを拒んだら
「ごめんなさい・・・」
と言って帰ろうとしたので、美雪の手を取って引き留める。そして聡にお前がどうにかしろと言い聞かせたが、やる気まるで無し。美雪は結局泣きながら帰っていった。さっきのプレゼントにはバースデーカードが挟まっていた。今日は聡の誕生日だったようだ。

After… ~忘れえぬ絆~

ルーとサイファが現れた。どうやら予定が早まって魂の融合が三日後に始まる事になったらしい。そして、その時全く新しい魂が生まれる可能性が高いことを。つまり、祐一と聡の人格は消えてしまうのだ。ただ、どちらかの魂が残る可能性もないことはないようです。というわけで、これから一日ずつ二人の魂に時間を与えることになった。それでそれぞれ好きなことをしてくれと。まずは聡のターンだった。

After… ~忘れえぬ絆~

目が覚めた。俺のターン。聡がどう過ごしたのかはサイファ達にも分らないらしい。勿論、香奈美の元へ直行。公園、学園、そして峠と二人で歩いた。他の人から見たら、恋人の死の原因を作ったちゃらい金持ちのボンボンと連れ添っているわけだ。実際家を出てくる時に香奈美は母親に色々言われたようです。

After… ~忘れえぬ絆~

夕日の峠で抱き合う二人。
「もう・・・いなくならないよね?」
しかし、俺は明日にはいなくなるかもしれない事を正直に告げた。魂の融合について説明すると、その理不尽なシステムを糾弾する香奈美だった。
「こればっかりは仕方ないんだ」
俺はもう一度香奈美を強く抱きしめた。そして、聡に体を返す決断をするのでした。香奈美の部屋でコーヒーをごちそうになる。しかし、香奈美はコーヒーを持ってきたらすぐに寝てしまった。ルーたちの仕業でした。時間が来たようだ。二人に聡に体を返すことを伝え、最後に渚と話しをさせてもらった。直接は無理なので、寝ている時に話しかけて夢だと思わせることにした。そして、渚にいつでも見守っていることを伝えた。渚も、元気になってくれると約束してくれました。

After… ~忘れえぬ絆~

気が付くと聡の部屋にいた。どうやら俺の魂が残ったようです。ルーたちは最後に美雪の居場所と、「気にするな」という聡の伝言を伝えて消えてしまった。俺は美雪のいる図書館へ向かった。美雪はそれが俺であることがすぐに分ったようです。美雪は全てを聡から聞かされていた。その時、聡はいつか生まれ変わって俺のようにバカ正直に生きてみたいと言っていたようだ。
「だから・・・生まれ変わったら・・・それで・・・もしも美雪がいたらそのときは・・・」
そう言って美雪にキスをする聡。そして、美雪に背を向けて聡は去って行った。美雪も、いつか生まれ変わった聡を見つけて、今度こそ自分を好きになってもらうと俺に宣言するのでした。

After… ~忘れえぬ絆~

公園に香奈美がやって来た。不安そうに声をかけてきた。
「汐宮・・・香奈美さんだよね?」
わざと他人行儀に話しかける。
「ええ・・・あなた・・・学文路・・・さん?」
頷く俺。
「そう・・・やっぱり・・・」
と肩を落とす香奈美に
「中身はユウちゃんだけどな」
と目一杯おどけてみせたのでした。その後は、真顔で香奈美に告げた。これから俺は、高鷲祐一であることを捨てて、学文路聡として生きていく事。そんな自分と付き合えば、香奈美は辛い目にあうだろう事。渚や陽子からもきついことを言われるかもしれない。香奈美は全て招致してくれた。

After… ~忘れえぬ絆~

あれから一年が過ぎた。俺は学文路聡として働いている。いずれは学文路家の跡を継ぐ事になる。香奈美が俺(聡)と付き合っていることは公然の事実となっていた。最初は渚は泣いていたし、陽子達にも色々と聞かれたようだ。でも、聡が俺である事は誰にも言っていない。渚とは最近になって仲直りできたらしく、今では俺より聡の方が100倍かっこいいとまで言っているそうだ。それでいい。みんな変わっていくけど、みんなと一緒に過ごした時間は変わらないから。香奈美が俺のことをユウと呼ぶのは二人だけの時だけ。それだけは変わらない二人だけの・・・約束・・・

「香奈美、そろそろ、帰るぞ」
あたしは頷いた。そう、あたしの気持ちは・・・変わらないの。忘れないの・・・みんなのこと。

After… ~忘れえぬ絆~


(おしまい)
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