After… ~忘れえぬ絆~ 9~11月「チャイナで学園祭」
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9月1日

夏休みも終わり前期試験に突入した。というわけで俺は図書館で勉強していたのだが、そこへ香奈美と陽子がやって来た。2人も勉強らしい。香奈美の学力は俺と同レベルなのだが、陽子は学内トップ10の常連らしい。ちなみに紘太郎もだ。そこへ渚も登場。晩御飯ができたから迎えに来たみたい。で、肝心の勉強は忘れて散々話しだけして帰宅した。
9月5日

試験が終了。慶生がテストの答え合わせを聞いてきたが、俺はそういう会話が嫌いだった。終わってからそんな事を聞いて何になるのかと。単に慶生が嫌いだからとしか思えないんだが。ホームルームの時間になったが、先生が教室に入ってくるなり教室が静まり返った。担任が美しい女性を連れてきたからだ。しかも、この間の峠で出会ったあの美人ライダーである。今度新しく保険医として赴任してきたらしい。名前は「三日市沙織」という。
9月19日

前期試験後の短い秋休み(なんぞそれ?)が終わり、学校は学園祭に突入した。そんな中一人で暇にしていた俺の元に紘太郎がやって来た。取り巻きの女の子を引き連れて。暇そうにしている俺に、楽しんで来いといってチラシを渡して去って行った。チラシに目を通すと、仮装喫茶店に目が留まった。ミニのチャイナドレスを着た香奈美とナース姿の陽子が写っている。そのチラシをめくって次を見てみると、渚が参加している真面目そうな写真展もあった。香奈美と陽子のコスプレ喫茶に行くしかないでしょ。店に入って席に着くと、香奈美に声をかけられた。真っ赤なチャイナドレスなのだが、これが半端じゃないミニだった。思わず太ももに釘付け。
「どう、この脚線美は?」
と恥ずかしげもなく見せ付ける香奈美に、照れるあまり
「お前のそのぶっとい足見てもなにも・・・」
と思わず口走るが、香奈美に睨まれて皆まで言うのはやめておいた。

話しを逸らそうとコーヒーを注文すると、今度はナース姿の陽子がオーダーを取りに来た。香奈美と違って極端なミニではなかったので安心したが、白いナース服に薄っすらと下着が・・・。そんな卑猥な視線を香奈美に感付かれたので話題を変える。二人はクラスが違うのに何故こんな事を一緒にやっているのか聞いてみると、どうやらここはクラス単位ではなく、アイドル同好会が主催しているらしい。つまり慶生に頼まれたというわけだ。衣装も全部慶生が用意したのだとか。

コーヒーが運ばれてきた。200円だというので値切るものの、俺にだけ特別扱いはできないと断られた。行くところも特にないのでコーヒーをお代わりしてこのまま居座ることに。コーヒーを飲みながらコスプレした女の子を眺めていたら、香奈美がまたやって来た。そして、奥の厨房へと引っ張り込まれ、シフトミスして人手が足りないから手伝って欲しいと頼まれる。仕方なく手伝った。コスプレ喫茶は大盛況で大忙し。そんな中、サンドイッチを作っていた香奈美が包丁で指を切ってしまった。俺は思わずその指を舐める。二人の目が合って変なムードになった。
「そ、そんなんじゃないからな」
と、慌ててこの状況を否定したが、むしろ逆効果であった。とりあえず香奈美を保健室に連れて行く事にした。保健室は学園祭の喧騒とは無縁の場所にあった。保健室には三日市先生がいた。傷の手当をしながら話しをしていたが、登山の話しになった途端、先生はちょっと寂しそうな顔を見せた。そして、香奈美も一緒に登ると言い出した。
「後に残されるのはいやだもん」
そう言う香奈美の表情が寂しげで、その目は三日市先生に似ていた。これが死亡フラグってやつか。

学園祭の最後は好例のキャンプファイヤー。祭りの終わりを告げる炎を見ながら、後半年しかない学園生活に思いを馳せる香奈美と陽子だった。
10月6日

渚に起こされて起床。今日は渚がクラスの研修旅行に行く日らしい。ってか、今は研修旅行なんてものがあるのか?ということで、今日は家事を自分でやらないといけないのだ。渚が出かけた後に二度寝した。香奈美に殴られた。

放課後、陽子の提案で三日市先生のところへ皆で行く事になった。バイクの話しになり、陽子がバイクに乗るようになった理由を聞くと、先生の表情が少し変わった気がした。昔の話だから忘れたと言って苦笑いする先生。どうやら触れられたくない過去がありそうだ。その後、先生はまた登山の事について聞いてきたが、これも何かあるようですね。暗くなってきたので帰る事になったが、俺が今日は晩飯の買い出しをしなければいけないという話しを聞いて、先生もついでだからと一緒に買い物することになった。すかさず慶生と香奈美もお邪魔虫に立候補してきたが、バイクだから二人しか乗れないのだ。本当は先生とタンデムとしゃれこみたいのだが、香奈美ルートなので仕方なくみんなと帰る事にした。

家で自炊にチャレンジしたが、案の定失敗した。仕方なく香奈美に電話して、香奈美の家で夕飯をごちそうになる事になった。夕食後、香奈美の部屋でくつろぐ。香奈美の部屋の写真立てには、昔の香奈美と俺の写真と、香奈美の父親の写真が飾ってあった。どうも、俺は香奈美の父親の記憶が曖昧なようだ。俺は、香奈美に父親のことを聞いてもいいのか分からずにいたが、香奈美がそれを察して父親について話し始める。父親は冬のマッキンレーに登山に行ったっきり帰ってこなかったのだという。ようやく全てを思い出した。例の山に登るきっかけを作ってくれたという人は香奈美の父親だったのだ。そして、俺がワンゲル部を作った時に香奈美が猛烈に反対したのも、山へ行くたびに異常に心配していたのもそういうわけだったのである。

香奈美の父親は、生前に「ユウにだったら香奈美を嫁にやってもいい」と言っていたそうだ。それを実現する気はあるかと香奈美に聞かれる。
「ば、ばか、お前、香奈美・・・」
とアワアワな俺に
「ねえ、キスだったら、してみない?」
と香奈美が更に追い討ちをかけてきた。香奈美に見つめられながら、いろいろ思いをめぐらせマジになっていた俺だったが、単にからかわれていただけでした。

二日後に渚が帰ってきた。お土産にカエルの置物を買ってきてくれた。他にも父と母、香奈美と陽子の分もあったが、もう一つある。誰の分か聞いてみると
「あ、これ・・・こ、これは、えっと・・・」
渚は妙に焦っている。数を間違えたと誤魔化しているが、まさかの慶生っぽい。慶生を毛嫌いしているお兄ちゃんはショックだろうな。
11月5日

11月には球技大会がある。運動音痴の慶生は俯きがちだ。香奈美は運営に夢中になるタイプ。俺はどうでもいいタイプ。紘太郎は去年はサッカーで大活躍して女にキャーキャー言われていたが、同じ事をまたやってもつまらないからと、今年はバスケに出るらしい。すごいですね(棒)。慶生は自らサッカーに出ると珍しく前向きになっている。きっと渚にいいとこ見せたいのでしょう。俺は、運営委員をやっている香奈美に早く決めてくれと催促されるが、全くやる気なし。そこで紘太郎が面白がって運営委員をやってみればと提案。なし崩し的に運営委員をやることになってしまった。
11月10日

今日は球技大会。運営委員はかなり忙しい。香奈美はそんな慌しさを楽しんでいる。テキパキと指示を出したりしてリーダーシップを発揮する香奈美に思わず感心。他の生徒からも信頼されている。その時、香奈美がペンダントをしているのに気付いた。香奈美の父親は天文台で働いていて、その関係で父から貰ったハレー彗星のタグだそうだ。香奈美は卒業後に天文台で働きたいという夢を持っていた。いろいろと自分の知らない香奈美を発見しました。グラウンドに出ると、俺達のクラスのチームがサッカーをやっていた。後半に入って0-1で負けていた。そこには応援する渚の姿が。応援というよりも、ただじっと見ている感じ。俺は、渚の視線の先に慶生がいる事に気付いたが、それがどういうことなのか頭が混乱していた。

体育館では紘太郎達がバスケをしていた。圧勝ムードだった。何をやってもすごいですね(棒)。紘太郎の隣りには陽子がいた。話しはしているようだが、目を合わせようとしない二人に激しく違和感を感じるのだった。近付いて話していても二人はよそよそしい。香奈美にその事を話してみるが、香奈美は別にそれがおかしい事だとは感じていないようでした。結局サッカーは1回戦敗退。バスケは準優勝でした。
11月20日

今日は男三人で下校。紘太郎は貰ったラブレターを読まずに処分すると言っている。それは誠意がないと批判するモテナイ二人だが、紘太郎理論では、読んだら会わないといけなくなる→会ったらフラなければいけなくなる→それはかわいそう、なんだとか。どうにも納得がいかない。何でもできて、家が金持ちで、女にモテるけど、そういった事が鼻につかないさわやかボーイみたいな設定だけど、全然そうは思えないんですが。

今日はガソリンスタンドでのバイト。冬山の資金稼ぎです。そこへ紘太郎がバイクでやってきた。これから峠を攻めるのだとか。三日市先生はあの峠ではかなりの有名人らしい。昔は先生のほかにもう一人凄いライダーがいたらしく、しばらく姿を消していたが、最近になって先生が復活したという事みたいです。そのもう一人というのが、先生の淋しい表情の理由っぽいね。紘太郎が走り去ると、今度は渚と香奈美がやって来た。渚が夜食を作って持ってきてくれたのだ。その後、バイトも終わりという時間になって慶生が現れた。夜も遅いというのに、これから遊びに行こうというのだ。慶生の態度もいけすかないので、俺は慶生は無視して家に帰る事にした。断固拒否する俺に慶生は
「こういうこと経験しておかないと・・・汐宮ともし何かあった時・・・何もできないよ」
とけしかける。夜遊びって、ホンマものの夜遊びかよ。
「ば・・・ばか、何言ってんだよ」
と言いつつ、俺の首は縦に振られたのであった。そこには、慶生には先を越されたくないというプライドもあった。隣町の歓楽街へと繰り出す二人。妖しい街の雰囲気に戸惑う俺に対して、慶生はやけに慣れている素振りだった。やけに自信満々で、いつものおどおどしたところがない。実は夜の帝王?しばらくは慶生の後ろを付いていたが、とある呼び込みに声をかけられている間に慶生を見失ってしまった。そのまま歩いていたら繁華街を抜けて公園に辿り着いていた。

目の前で女性が酔っ払いに絡まれている。酔っ払いに何見てんだゴラァされたので、俺は女性を引っ張って逃げ出した。建物の影に逃げ込む。女性の顔には涙の跡があった。俺が一人であることを確認したその女性は
「じゃあ・・・付き合ってくれないかしら?」
といきなり誘ってきた。痴女?。女性に手を引かれて電車に乗り込む。名前は美雪というらしい。美雪の誘惑に困惑していると
「だめなの・・・あたしじゃ・・・やっぱりだめなのね・・・」
と言って、また泣き出してしまった。男に振られたか何かして自暴自棄になっていたようです。誘惑したのが童貞君で良かったですね。

次の月曜日、渚からバイトの日に夜中まで帰ってこなかった事を聞いた香奈美に、その理由を問い詰められる。慶生が口裏を合わせようとするが、慶生の部屋にグラビアアイドルの写真を見に行った事になってしまい、女性陣から軽蔑の眼差しを受けた。放課後に女性三人と本屋での買い物に俺だけが付き合わされた。街を歩いていたら女性から話しかけられる。美雪だった。やばいと思い、香奈美達を先に行かせようとしたが、美雪は俺が落としていった学生証を渡しただけでした。どういう事なのかを問い詰められ、結局、バイトの後に慶生と隣町に出かけたことがバレてしまった。さすがに風俗店に行くためとは言えず、映画を見に行ったと誤魔化そうとしたが、映画くらいでどうして隠す必要があったのかと言われ
「あ、あのさ・・・ちょっと普通の映画じゃなくて・・・」
と、ちょっとマニアックな映画のつもりで弁解したが
「えぇ?そうなの?お兄ちゃん」
と完全に誤解された。本当の事を白状していた方がマシだったような。それから2、3日、渚はご飯を作ってくれませんでした。
画面が真っ白になって、あの男女二人との会話に。俺は皆の事を何でも知っていると思っていたが、本当は何にも知らなかった事にこの頃から気付いたとか言ってました。
(つづく)
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