アルスラーン足手まとい戦記 後編
前編はこちら。

同じ頃、王都エクバターナでは、1人のルシタニアの権力者が、地下牢に囚われたアンドラゴラスの元を訪れていた。ルシタニア王の弟ギスカール。軟弱な国王に変わって国を治めるルシタニアの真の支配者である。

ルシタニアの2つの要塞を落としたアルスラーン軍は、勢いに乗り王都エクバターナに迫っていた。だが、ここに後方から思いがけない敵が登場した。パルスの東北に位置する敵国トゥラーンの軍勢が、国境を超え侵入を開始したのである。ペシャワール城は直ちに籠城の構えに入り、その知らせを受けたアルスラーン軍も、救援のため引き返すことになった。アルスラーンは、ファランギースとパルスの将軍クバートを先触れの使者に立てた。

ファランギースらの活躍により、トゥラーン軍は一時退却した。そして、アルスラーン本体も無事にペシャワール城に到着した。

包囲陣を突破され、アルスラーン軍のペシャワール城期間を許してしまったトゥラーン軍は怒り狂い、パルスの農民の処刑を見せつけることで、アルスラーンを城外へ誘い出そうと試みた。

パルスの国民を人質に取られたアルスラーンは、感情のおもむくままに出撃してしまった。トゥラーンに対する怒りで理性を失っているアルスラーンを補佐すべく、ダリューン達は王子を追った。

一時的にペシャワールを守り切ったアルスラーン軍は、ナルサスの作戦で捕らえられた捕虜に偽りの情報を持たせると、故意にペシャワールの牢から脱出させた。パスルの援軍十万騎が接近中との偽情報を信じたトゥラーン軍は浮足立ち、混乱の果てに国境の彼方へと逃げ去った。だが、アルスラーンの一行に戦いの勝利を祝う暇は訪れなかった。エクバターナを脱出した国王アンドラゴラスとタハミーネ王妃が、ペシャワールの首都に到着したのである。
「アルスラーンよ、そなたに命ずる。直ちに南の海岸地帯におもむき、五万人の兵を集めるのだ。使命を果たすまで、我がもとに帰参するには及ばぬ。」
あまりにも理不尽な国王の言葉であった。だがアルスラーンは、あえて父の命に従い、ただ一人ペシャワール城を旅立った。

こうしてアルスラーン一行は、南の海岸都市ギランを目指して出発した。ルシタニアとの戦いは、すでに9ヶ月に及ぼうとしていた。ギランの街、それはパルス王国南部ソトーンに面した賑やかな港町である。途中アルスラーンの一行は、砂漠の盗賊ゾット族の奇襲を受けた。族長の娘アルフリードのとりなしで、ゾット族は王太子への忠誠を誓い立ち去った。

海賊の襲われている商船を助けるために、アルスラーンはダリューン、ギーヴ、ファランギース、ジャスワントの4人を派遣した。

ダリューンらの活躍により、海賊は全滅、船長のグラーゼ共々商船を救出することに成功した。

海賊から救われた商船の船長グラーゼは、心からの礼を述べ、アルスラーンへの協力を申し出た。ナルサスは、ギランの街に住む友人の貴族シャガードにも協力を依頼した。だが実は、このシャガードこそが、海賊の影の支配者であったのだ。シャガードは、アルスラーンを倒すため、ナルサスらの不在を狙って、ギランの街への総攻撃を命じた。

ナルサスの不在を狙ったシャガード達であったが、この情報はナルサスの流した偽情報であった。ナルサスは密かに海賊を倒す準備を行い、総攻撃に備えるのだった。

海賊船団は打ち破られ、捕らえられたシャガードは、パルスからの追放を言い渡された。そして、アルスラーンの王者としての資質を見抜いたギランの大商人達は、莫大な資金と勢力の援助を約束した。

パルス歴321年8月、ギスカール公爵率いるルシタニア軍は、王都エクバターナを出陣した。対するは、アンドラゴラス率いるパルス軍。決戦の時は間近に迫った。しかし、両軍にとって作戦を変更せざるを得ない大事件が、この時を狙いすまして起こされた。銀仮面ことヒルメス王子が、ルシタニアに反旗を翻し、王都エクバターナを占領したのである。

王都奪回を目指すパルス軍は、その進路をエクバターナに向けた。ギランより帰還したアルスラーンの陣営にも、ヒルメスによるエクバターナ占領の報がもたらされた。アンドラゴラスとの決別を決意したアルスラーンは、ルシタニア軍との決着をつけるべく、アトロパテナの野において、ルシタニア王弟ギスカール率いる軍との最後の対決を開始した。

アトロパテナの決戦で、ルシタニア軍は壊滅。ギスカール公爵は、腹心の部下にも見捨てられ、囚われの身となった。アルスラーンは、パルスの領土から立ち去ることを条件に、ギスカールの命をすくい、追放した。

その夜、アルスラーンは密かに、野営中のアンドラゴラスの身の元を訪れ、母である王妃タハミーネと再会した。14年前、
タハミーネが産んだ実の子は、王子ではなく王女だったのだ。パルスでは、王女に王位を継ぐ権利はない。そのためにアンドラゴラスは、貧しい騎士の家に生まれたアルスラーンを引き取り、王子として育ててきたのだった。

アルス国王の王位。それは、デマヴァント山の地下深くに眠るルクナバードと呼ばれる霊力を秘めた宝剣によって象徴された。その昔パルスは、千年の長きに渡り、魔王ザッハークに支配されていた。英雄王カイ・ホスローは、宝剣ルクナバードを手に魔王を撃破し、デマヴァント山の地下深くに封印した。王の死後、ルクナバードは、その遺体とともにこの地に埋葬され、今もなお、ザッハークの魔力を封じ続けているのである。かつて、銀仮面ことヒルメス王子も、宝剣を取り出そうと試み、その霊力によって退けられた。

ルクナバードを手に入れたアルスラーンは、兵を率いてエクバターナへと進撃を開始した。窮地に立たされたヒルメスは、僅かな部下とともに王宮の塔に登り、即位を宣言するための戴冠式を決行した。儀式の間には、ルシタニアの国王イノケンティス七世も引き出されていた。実の弟ギスカール公爵に置き去りにされたイノケンティスは、ヒルメスに捕らえられていたのである。

ルクナバードの霊力に助けられ、アルスラーンは、ついにヒルメスを討ち倒した。

こうして、パルスの王位を策略によって手中に収めていたアンドラゴラスは死んだ。パルス王国に平和が戻り、破壊された街の修復も始まった。

そしてアルスラーンは、パルス第19代国王として即位した。アルスラーンの行く手には、依然多くの謎と苦難が待ち受けている。宝剣の封印を解かれた魔王ザッハークの呪いを打ち破り、王国に心の平和を取り戻す日まで、アルスラーンの戦いは続くのである。時にパルス歴三百と二十年、大空と大地に光あふれる9月のことであった。

(おしまい)
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